
で表すことができる。図2.2.3は石油タンクの火災実験例を示す1)。容器の径が大きくなると燃焼速度は大きさに関係なくほぼ一定となり、無次元火炎長もほぼ一定に近づくことが示されている。規模の小さいタンク火災の場合は壁面の影響を受けるが、流出油焼却の場合はこの影響が無いため燃焼速度は少し小さくなると考えられる。流出後揮発分が蒸発し、ムース化した燃料に関するデータはほとんど見あたらない。
ムース化油の焼却実験によれば、燃焼終期になると油層の下にある水が沸騰し、燃焼が著しく激しいものとなることが観測される。これは油層が薄くなり水への火炎からの伝熱が大きくなるためと考えられる。ムース化油の容器燃焼の場合には、このような状態になると泡の膜ができ急速に火勢は衰え消火に至り、泡を除くとまた燃焼が再開することが観察された。
[熱放射と熱発生率]
石油類の火炎では多量の炭素粒子が発生し、これが高温になると輝炎となり、放射伝熱的には黒体輻射に近いものである。媒質全体から熱放射はランバートベール(Lambert Beer)則で与えられる放射率と表面積に比例し、散乱が無視できる場合、体積に比例し、L・S∞L 3となる。ここで、Lは火炎長、Sは熱放射面積を示す。
一方、火炎中に煤や灰など大きな粒戸が存在するときは、散乱が無視できなくなるので、火炎の性質は不透明な灰色体に近くなる。このような場合、放射量は表面積、即ち火炎寸法の2乗に比例するとされる。
一定火源寸法の上に形成される火炎長(L)は、熱発生率(Q)の2/5乗に比例することが実験的に知られている。これを用いると、散乱が無視できるときの放射エネルギーはL 3∞Q6/5に比例し、無視できない場合はL 2∞Q 4/5であり、炭素の組成比が大きいほどn=4/5に近づく。従ってムース化油の焼却は後者にあたり、熱放射面積(S)、火炎長(L)、熱発生率(Q)には次の関係が成り立つ。

[形態係数]
形態係数は受熱体から火炎の放射面を見る立体角に比例し、熱放射強度q0radは次式で表される。
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